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2011/03/26
「発表論文等」を更新しました。
2011/02/23
「研究テーマ」に3次元位置認識技術に関する新しいプロジェクトを追加しました。
2010/12/10
「発表論文等」を更新しました。
2010/06/21
「発表論文等」を更新しました。

超音波通信を用いた位置認識システム

本研究では、超音波を用いた高精度な屋内向け位置認識システムを提案しています。 我々のシステムでは、超音波送信機から受信機へ超音波信号を送り、 その伝播時間を計測することで送受信機間の距離を測定します。 2つの受信素子と送信機との間の距離を測定することで、 送信機の2次元座標を求めることが可能です。

本研究では、超音波の受信時刻検出に位相一致法と呼ばれる 新しい手法を用いています。 位相一致法を用いることで、非常に高精度な距離測定を行うことができます。

システムのデモビデオが こちら からダウンロードできます。

原理

我々のシステムでは、TOA(Time of Arrival)方式とAOA(Angle of Arrival)方式を 組み合わせた手法によって位置測定を行っています。 TOA方式では、送信機と受信機は無線通信によって時刻同期を行います。 送信機は超音波信号を受信機へ送信するのと同時に、無線信号も送信します。 受信機はこの2つの信号を受信し、それらの受信時刻の差を超音波の伝播時間として計算します。 超音波の伝播時間から、送信機と受信機の間の距離を計算することができます。

AOA方式は、受信された超音波信号の到来方向を求めるための手法です。 AOA方式では、受信機に2つの超音波受信素子が必要となります。 これら2つの受信素子はある距離だけ離れて平行に設置されます。 すると、超音波信号は、これらの受信素子によってそれぞれ異なるタイミングで受信されます。

Time of Arrival Angle of Arrival

右上図はAOA方式の原理を示した図です。 三角法を用いることで、信号の受信時刻の差と受信素子間距離Lより、 受信信号の角度を計算することができます。

位相一致法

本研究では、超音波の受信時刻を高精度に検出するための手法として、 位相一致法(Phase Accordance Method)と呼ばれる新しい手法を提案しています。 従来の手法と異なり、 位相一致法では複数の副搬送波からなる超音波信号を送信します。 これらの副搬送波の位相は、ある特定の時刻で一致します。 我々はこの時刻を位相一致点(epoch)と呼んでいます。

下図は、2つの副搬送波からなる超音波信号を示しています。 2つの周波数の波が重なり合い、「うなり」の形となっていることが分かります。 我々はこの波形をsync patternと呼んでいます。

Sync Pattern

位相一致法では、振幅ではなく位相に着目して測定を行っています。 そのため、超音波の減衰やノイズに強い、高精度な測定を実現することができます。 従来の振幅ベースの手法に比べ、 我々のシステムは、距離測定においておよそ100倍高精度な計測を行うことができることが示されています。

高精度な計測に加え、我々の手法には、短時間で計測を行うことができるという利点があります。 これはsync patternがわずか2msの超音波バーストであるためです。

位相一致法のもう一つの利点としては、 sync patternが後続の信号に対して位相の基準点を与えるということが挙げられます。 これを利用して、sync patternの後ろにPSKやQAMで変調を施した信号を続け、 データ通信を行うことが可能であると考えられます。

システム概要

我々の開発した位置認識システムは、以下の4つの構成物から成り立ちます。

  • 超音波送信機
  • 超音波受信機
  • 信号処理基板
    ... 離散化された超音波信号をメモリに記憶し、位相一致法を実行します
  • 無線通信モジュール (MICAz, Crossbow Technology社)
    ... 送受信機の時刻同期に用いられます

これらの構成物は、下図のように接続されています。


システムデザイン

各構成物の写真です。

送信機 受信機 信号処理基板

実験とその結果

送信機と受信機の距離を1.5mに固定し、位置認識実験を行いました。 1200回の測定を行ったところ、以下に示すような非常に高精度な距離測定結果を得ることができました。

  • 平均: 1500.162mm
  • 標準偏差: 0.122mm

角度測定についても実験を行いました。 送信機を受信機に対して10°の位置に固定し、1200回の測定を行いました。

  • 平均: 10.68°
  • 標準偏差: 0.043°

発表論文

  • 橋爪 宏達,金子 歩,杉本 雅則: 位相一致法による正確な超音波位置認識手法とその特性, 電子情報通信学会論文誌, Vol.J91-A,No.4.(2008年4月).
  • 金子 歩,藤原 直弘,杉本 雅則,橋爪 宏達: 位相合致法を用いた相対位置認識技術の開発, エンターテインメントコンピューティング2006,pp.145-146 (2006年9月).
  • 金子 歩,杉本 雅則,橋爪 宏達: 位相合致法を用いた相対位置認識システムの試作, 平成17年度第5回アコースティックイメージング研究会, 東京,pp.35-40 (2006年2月).
  • Hiromichi Hashizume, Ayumu Kaneko, Yusuke Sugano, Koji Yatani, Masanori Sugimoto: Fast and Accurate Positioning Technique Using Ultrasonic Phase Accordance Method, In Proc. of IEEE TENCON05, Melbourne, Australia, pp. 826-831 (2005).
  • 金子 歩,菅野 裕介,矢谷 浩司,杉本 雅則,橋爪 宏達, 超音波センサを用いた相対位置認識デバイスの設計, 情報処理学会第67回全国大会, pp. 3-759-3-760 (2005).
  • 菅野 裕介,金子 歩,矢谷 浩司,杉本 雅則,橋爪 宏達, 超音波センサを用いた相対位置認識技術における通信及び測距技術, 情報処理学会第67回全国大会, pp. 3-761-3-762 (2005).